離乳食調理実習で母親が調理した栄養価の高い離乳食を食べる子ども

はじめまして。NPO法人ISAPHの山崎裕章と申します。2014年9月にFUNNに入会させていただきました。入会のご挨拶ならびに現在アフリカのマラウイ国で実施している「子どもにやさしい地域保健プロジェクト(5歳未満児の栄養状態改善プロジェクト)」の今についてお話をさせていただきます。

マラウイについて

主食のシマ(下)と副食

▲主食のシマ(下)と副食

マラウイはアフリカの東南部に位置し、国土面積は北海道と九州を合わせたほどです。マラウイの人口は約1600万人、公用語はチェワ語と英語、主な宗教はキリスト教とイスラム教、一人当たりのGNI は270US$、主な産業はたばこ、メイズ、紅茶、綿花、ナッツ、コーヒー、繊維、セメントなどです。

紅茶はイギリスの皇室に献上されており、マラウイコーヒーやタバコは日本でも販売されています。マラウイは世界で9番目、アフリカで3番目に大きいマラウイ湖を有しています。魚が豊富で国民の食糧源(栄養源)となっています。主食は白いトウモロコシ(メイズ)の粉をお湯で溶いて、マッシュポテトのようになったものです(右の写真)。

マラウイの人口・保健の現状について

5歳未満児と1歳未満児の死亡率はMDGs の下で大きく改善されています(表1:人口動態統計および保健指標参照)。
しかし、感染症での死亡率は高く、5歳未満児における死亡原因もやはり感染症(マラリア、肺炎)が多いです。また栄養失調も深刻な問題となっています。5歳未満児の栄養状態では、慢性栄養失調(栄養阻害とも呼ばれる)(年齢に対する身長での低身長)が47.1%、低体重(年齢に対する体重での低体重)が12.8%、急性栄養失調(身長に対する体重での低体重)が4.0%です。

図2に示すように3ヵ月後から18ヵ月までの期間に慢性栄養失調児と低体重児の割合が急増しており、生後18 カ月までの乳幼児の栄養摂取(母乳と離乳食)に関わるところに問題が発生している事がわかります(図2:栄養失調児の推移参照)。

子どもが栄養失調に陥る理由として、母乳時期に母乳以外のものを与える、母乳量が不十分、離乳時期に栄養価のある離乳食を与えない、感染症により摂取が抑制あるいは摂取した栄養の損失または流失、などが挙げられます。低体重児(2500g以下)を出生する率が高い理由のひとつとして、栄養失調が改善されないままに女性が10代で結婚そして出産することが報告されています。

乳幼児時期、特に2歳までの慢性栄養失調の結果、学童期での教育の遅れ、これによる低い学歴、さらに成人に達しては生活習慣病の発生リスクが高いとされています。このようなことから、GDP 3%の損失、そして個人では22% 低い生涯収入になると世界銀行は報告しています。このようなことからも、2歳児までの栄養摂取は、個人のだけの問題でなく、国家の発展に大きく関与することから、その対策が急がれています。

子どもにやさしい地域保健プロジェクトについて

プロジェクトの活動地は、マラウイ北部のムジンバ県内で、ザンビア国との国境に接している地域です。この地域内にエディンゲニ保健センター(以下、EH/C)が配置され、このEH/C管轄の26村の5歳未満児約2500人(人口約15000人)を対象としています。

プロジェクトの活動内容ですが、プロジェクト目標は「ムジンバ県の対象地域における5 歳未満児の栄養状態が改善される」です。図2に示しましたように18 ヵ月までの乳幼児に栄養失調に陥る児が多いことから、この時期に摂取する母乳と離乳食の改善が重要とされています。最近ではSUN(scale up nutrition)と称し、妊娠から2歳の誕生日までの1000日が最も重要として啓発しています。このSUNは2014年の先進首脳7か国サミットでも取り上げられ、日本政府もマラウイに支援を行っています(当プロジェクトとは別の案件)。

5歳児未満の栄養の改善について

離乳食の調理実習

▲離乳食の調理実習(写真3)

保健ボランティア研修

▲保健ボランティア研修(写真4)

以前の体重測定。衣服を着脱せずに測定

▲以前の体重測定。衣服を着脱せずに測定(写真5)

現在の体重測定。下着1枚で測定

▲現在の体重測定。下着1枚で測定(写真6)。

乳児の身長測定。おむつが厚く足を揃えられない

▲乳児の身長測定。おむつが厚く足を揃えられない(写真7)

目標達成のための活動として、栄養失調を含め病に伏せている乳幼児の早期発見と治療、母乳育児の啓発、離乳食の改善、衛生関連疾病(下痢等)の予防、寄生虫症の治療と予防などです。
これらの活動は、各村の保健ボランティアの参加で実施しています。保健ボランティアに活動を実施してもらうには、栄養、衛生、身体測定法、離乳食の調理法など基本的な内容を学んで貰わなければなりません。座学だけでなく、実習も取り入れながらの研修です(写真3)。この研修が終了したのちには、自分の村の乳幼児を持つ母親に栄養、衛生、そして離乳食の調理法等を指導して貰っています。

また5歳未満児の健康診査(以下、健診)においては体重と身長の測定を実施して貰います。離乳食に関しては、母親に離乳食を指導しても、なかなか自宅では調理してもらえません。そこで乳幼児を持つ母親でグループを形成し、和気藹々とおしゃべりや歌を歌いながら離乳食を作り、その場で子供に食べさえることを実施しています(写真4)。

そしてこの機会を利用して、栄養(母乳含む)や衛生の教育をも実施しています。健診での体重測定においては、衣服の着たままだったり(写真5)、体重計のメモリを「ゼロ」に合わせなかったりと、測定の精度に問題がありました。プロジェクトが開始されてからは、測定する意味が理解され、きちんと測定が実施されるようになり、精度の良い結果を報告しています(写真6)。

ただ身長測定は子どもがあばれたり、足や頭を固定しなければならない、などまだ良い結果を得るまでに時間が必要な状況です(写真7)。慢性栄養失調が多い現状から、どうにか精度の良い測定を実施できるように保健ボランティアと共に日々奮闘しています。

国際協力ニュースVol.106掲載 (2014年10月発行)

【筆者】 山崎裕章 (やまさき・ひろあき)
NPO法人ISAPH、聖マリア病院国際事業部、ISAPH

神奈川県出身。臨床検査技師。国立病院等を勤務後、1989年12月青年海外協力隊に参加。帰国後、臨床検査(感染症対策、精度管理)などの国際協力を従事、1997年より現職。
筆者のやまさきひろゆきさん

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