カンボジアの希望孤児院にて

9月2日から11日まで、FUNN主催のスタディツアーが初めて行われた。2日から6日まで「カンボジア」を訪れ、7日から11日まで「タイ」を訪れた。今回の旅の目的としては、NGOや国際協力などの国際理解の推進、主体的な国際協力活動への参加・行動、現地を視察することで自らが、今まで気づかない事への気づき、また興味関心が深まり、国際協力への学びにつながることである。

私個人としては、今回のスタツアを「開発と経済~幸せとは?~」というテーマで行く先々の現場を見て回った。それは、「経済が活性化され、開発が進んでいけば人々は幸せなのか。」という疑問を抱いたからだ。

まず、最初に訪れた国は世界の中でも最も貧しい国の一つとしてあげられる「カンボジア」。近年、目覚ましい経済発展がなされる首都プノンペンは、高層ビルが立ち並ぶ反面、物乞いの人がいるなど「格差」が顕著にあらわれていた。プノンペンでは歴史博物館や虐殺博物館、キリングフィールドなどでカンボジアの歴史を学び、マーケットやメコン川遊覧船にて観光とともに、現地の生活様式を感じることができた。

またカンボジア北西部に位置するバッタンバンでは、農村の訪問や孤児院の視察よりカンボジアの水不足や教育事情を確認することが出来た。観光都市シェムリアップでは、世界遺産「アンコールワット」をはじめ多くの歴史的建造物を肌で感じることができた。また、ポルポト時代に失われかけたカンボジア伝統工芸を復興させた「クメール伝統織物研究所」やカンボジアの伝統的な踊り「アプサラダンス」に触れることで、カンボジアの伝統を学ぶことができた。

次に訪れたのは東南アジアの中では経済発展が進んでいる「タイ」。首都「バンコク」は福岡にも勝るとも劣らない経済発展がみられた。バンコクではアユタヤ遺跡群を見ることで過去のタイを学び、タイ最大のスラム「クロントイ・スラム」を見ることで今のタイを学ぶことができた。

また、農村部に位置する「チェンライ」では、民族文化や自然環境に触れることが出来た。学校へ通うことが困難な少数民族の子どもたちに寄宿舎をつくり、就学機会を提供する活動をしている「アブアリ・プロジェクト」では、農村部での現状を肌で感じ、子どもたちから多くの学びを受けた。ゴールデントライアングルと呼ばれる、麻薬・覚せい剤密造地帯であった場所をみて、この場所では生きていくために仕方がなく密造をしていたと勉強できた。

アンコールワット前で参加者の方々と

▲アンコールワット前で参加者の方々と

アブアリ・プロジェクト寄宿舎にて

▲アブアリ・プロジェクト寄宿舎にて

私は今回の旅を通じて経済発展している地域、そうでない地域に触れ、それぞれの幸せと価値観について考えた。経済発展が進む都市部と経済発展をしていない農村部はどちらが幸せかと言われたらどちらかとは断言できない。私たちのように便利な生活に慣れている人からしてみれば、経済が発展していて便利な暮らしができるほうがいいと考える人のほうが多いだろう。

逆に、そういった便利な生活を知らない人は、自然を守り自然と共に生きるほうがいいと考える人が多いと思う。もちろん、このそれぞれが悪い良いではなく、そういった考え方もあるということ。それは人それぞれの価値観だから否定してはいけないし、価値観は人それぞれなのだから、自分の価値観を押し付けてもいけないと今回のスタディツアーで勉強できた。

また「便利な生活をしているから幸せである」と断言できるわけでもないし、「お金がないから幸せではない」とも断言できない。価値観や幸せといったものは、他人にはかることができないと感じた。

このように、自分の価値観で「可哀想だから、援助してあげるべきだ」という勝手な支援が現地の人にとってありがた迷惑になる事がある。途上国は貧しいから「私たちが彼らになにかしてあげるべきだ」という、どこか上から目線な考え方を持ち援助を行うと、現地のニーズと援助者との間で溝ができてしまう。その溝が、円滑な援助に繋がらず、援助をしていた筈なのに、現地の生活を壊す結果になることもある。

確かに、現地の方々の生活は貧しいかもしれない。けれども、彼らは彼らでその生活に満足しているかもしれないし、そこに何かしらの幸せを得ているはずだ。それを勝手な思い込みや価値観で、援助を行い現地の生活を壊してしまうことは、あってはならないと思う。援助を行う側にも「援助をする」という責任が生じるのは当たり前なのだから、援助の仕方を考えなくてはいけないと感じた。

私は今回のスタディツアーを終えて、「幸せとは」という漠然としたテーマをより深く考えるようになった。それは、各国や各地域での幸せに触れることが出来たからだ。前にも言ったように、幸せは他人に図ることはできない。しかし、現地の人とお互いに話し合うことで、現地の方々の幸せという気持ちは共有できるものだと思う。

それは、勝手な思い込みや価値観で援助をするのではなく、お互いの意見を尊重し合い進めていく援助の形ができるからだ。より良い援助の形を目指し、これからも国際協力に関わっていきたいと思う。そしてもっと学び、様々な立場の人から意見を聞いてみたいと思う。来月行われるNGOカレッジのテーマは「幸せのかたち~国際協力のあり方を考える~」。スタディツアーを終えた今、感じたことを参加者の方々と共有し、幸せとはなんなのかを、より考えていけたらいいと思う。

国際協力ニュースVol.98掲載 (2012年10月発行)

【筆者】 佐藤大智 (さとう・だいち)
九州国際大学
FUNNインターン(当時)