昨年11月8日にフィリピン中部のビサヤ地方を襲った大型台風30号ハイエン(現地名ヨランダ)は、 最大瞬間風速105メートルという過去に類を見ない程の猛烈な台風で、烈風や高潮被害で約8千人の死者・行方不明者を出しました。
ソルト・パヤタスの活動拠点であるケソン市パヤタス地区やリサール州カシグラハン地区は、フィリピンの北部ルソン島にあり今回は被災を免れましたが、パヤタスの住民や団体関係者の親戚・友人で被災した人は少なくなく、家族らの消息が1カ月以上つかめず不安な日々を過ごしている人もいました。
フィリピン国内でも、とりわけ困窮度が高いと言われている地域が、今回被災したレイテ・サマール地区です。ごみ山のあるパヤタス地区の住民は、約8割が田舎の貧農・貧漁村出身者ですが、その多くはそこの出身者です。
そんな地域で起こった大災害だったので、私達も何かできる支援をしようと、フィリピン支援を行う日系NGOが20団体加盟している日比NGOネットワーク(JPN)や、現地で緊急災害支援を得意とするNGOコンサーンと提携し、広報協力から始めました。
そして、被災から10日後の11月17日~20日にかけて、コンサーンのスタッフと共にセブ島からレイテ島に行き、被災現場の視察と調査に同行し、11月27日にはレイテ島西岸のイサベル市、パロンポン市、メリダ市の500世帯約3000名分の食糧・日用品支援を実施しました。
ご寄付によりセブのコンサーンの事務所に支援物資が集められ、ボランティアたちの手で緊急支援パックが作られました。11月27日、支援物資を積んだトラックがセブのコンサーンの事務所からレイテに向かう波止場に運ばれ、レイテ島に着いてから、マタラン村、カンパアン村、サンイシドロ村、ポブラシオン村の4か所で1日かけて配給活動が行われました。
物資を受け取れる人は、全員というわけではありません。配給活動は事前の準備をした上で行われています。コンサーンや地元のボランティアの人たちが、まず現地に入って調査を行い、家々の被災状況、生活状況を調べ、支援者マスターリストというものを作ります。そしてそのリストに含まれた人に、事前に物資の引換券を渡します。例えば、所得が高く安定している人は自力で食糧や物資を調達できますから、そのような家庭は外されていました。
この時の被災者からの声として、全てのことが突然で、たった3時間程の間に、吹き飛ばされたり、水が押し寄せたりと、とても怖い思いをしたこと、米やガソリンが軒並み値上がりして物が買えないこと、元の生活に戻るために、家屋を修理する工具、資材、農機具などが聞かれました。
調査で立ち寄ったセブ島のスーパーマーケットでは、国産米が売り切れ、残った米は通常の5倍以上する外国米だけで、ガソリンスタンドの前はどこも3~4倍に値上がりしたガソリンを長蛇の列で待っていました。被災していない住民への影響も大きいと痛感しました。
聞き取りによる、現地のニーズの把握に加え、国連や社会福祉省、村役場、NGOなどの多方面の情報を頼りに、私たちは今後も現地NGOコンサーンと地元のボランティアの方たちと連携して支援活動を応援していきます。
上記の支援は、市民の方々からのご寄付と、西日本国際財団様からの助成金で実施することができました。
国際協力ニュースVol.103掲載 (2014年2月発行)
【筆者】 小川恵美子 (おがわ・えみこ)
特定非営利活動法人ソルト・パヤタス事務局長
1970年生まれ。高校の英語教師をしていた24歳の時、NGOが主催するスタディツアーに参加し初めてフィリピンを訪問。ごみ山の町パヤタスと学校に行かず働く子どもたちの存在を知り、子どもたちに学費を支援するボランティア団体ソルトを設立。6年半フィリピンに滞在し、その後国際緊急支援団体でNGOの運営や経営実務を学んだ後、2007年日本国内の拠点を福岡とし、NPO法人ソルト・パヤタスを設立し、現在に至る。